1.1. 録音


録音時の心得

  • ①冷房や送風機が止まっている季節・時間帯を狙って録りに行く
     冷房や送風機の音は思いのほか大きく、編集時の邪魔になったり小さい音が埋もれてしまったりします。
  • ②できるだけ乗客が少ない路線・区間・方向・列車を狙う
     他のお客さんの歩く音、花粉症で鼻をすする音、レジ袋や新聞をめくる音、袖のかすれる音など、録音中は気にならなくても帰宅後に聞いてみるとかなり目立って聞こえます。それらの音が鳴るたびにとてもイライラしてしまうのですが、特異なことをしているのは自分のほうだということを忘れないようにしましょう。
     一番いいのは、自分以外のお客さんができるだけ少ない列車を狙うことです。ただ、西武・東武・小田急のようにどんどん郊外に向かっていく路線は比較的楽なのですが、東急・京王・地下鉄のように両端が都市になっている路線は難易度が高いように思います。それでも、早朝・深夜であれば空いている区間というのがきっと存在します。そこを狙いましょう。
  • ③先頭車と電動車の両方を録音する
     先頭が電動車になっていれば一度で済むのですが、そうでない場合は先頭車と電動車の両方で録音する必要があります。
     電動車はモーターや制御器の音が、先頭車は線路の継ぎ目の音や警笛、連絡ブザー、ATSやATC、ハンドルを操作する音などが目的です。先頭車では一番前の乗務員室すぐ後ろで録音するのが望ましいです。
  • ④マイクを床から離す
     これには流派があるかもしれません。私は床から離して、できれば着座したときの自分の耳とマイクが同じ高さになるくらいが理想だと思っています。なぜなら電車を運転したときの環境に一番近くなるためです。(実際は体力や周囲の視線などの問題から、腰や膝くらいの高さで録音していることが多いです。)
     マイクを床にくっつけたほうがモーターなど床下機器の音が大きく入ってきて良い、と捉える方もいらっしゃるかもしれません。ただ、そうすると、床に耳を押し付けて運転しているかのような感覚になります。本来は椅子に座って前を向いて運転しますから、そのときの耳の位置にできるだけ近い環境で録音するのが望ましいと思います。
     コンプレッサーやブレーキ緩解音も同じで、床下に潜って運転するわけではないので、車内の先ほど申し上げたような高さからモーター音などと一緒に録音することを私は推奨します。
     車内放送や駅の放送も同様です。スピーカーにマイクをくっつけて録音すると、座って前を向いて運転しているのに放送だけ耳のすぐ近くから流れているような錯覚に陥り、違和感の原因になります。Bveで使うという目的においては、空間に音が反響している感じを含めて録音するのがいいと思います。
  • ⑤できるだけたくさん録音する
     「うまく録音できた!」と思っても、聞き返してみたら雑音が入っていたり、頭の中で思い描いている○○○系の音と違ったり、といったことは多くあります。
     ですので、できるだけ長い時間録音する、号車や編成を変えて複数録音してみる、といったことをお勧めします。
     また、個体差や時期によって電車の音は変わるので、「脳内の○○○系の理想の音」に近づけるために、複数の録音データからいいとこ取りをすることもあります。レコーダーを持って遠くまで乗りに行っても目の前の電車が理想の音を出してくれないことは往々にしてあります。遠征しているときほど複数の号車・編成から録音するというのが望ましいかもしれません。
  • ⑥録音中は身動きしない
     自分自身の息をする音や服が擦れる音、レコーダーを持っている指が動く音が入ってしまったり、そもそもレコーダーの角度が変わって音の指向性が途中で変わってしまったり、などがあります。帰宅後の後悔やイライラの元になりますので、身動きしないようにしましょう。私のように鼻炎持ちの人も、鼻をかまないように頑張りましょう。
  • ⑦録音レベルを小さめにし、自動調整を切り、レベルを一定にする
     機種にもよりますが、多くのレコーダーでは録音レベル(外の音をどれくらいの音量・感度でレコーダーに取り込むか)の設定ができると思います。まず録音レベルは小さめに、かつ、一定にしましょう。
     人間の脳や耳はうまいことレベル調整してくれているのですが、レコーダーで録音してみると、実際の電車から出る音は自分の想像よりもはるかに大きかったりします。たとえばカーブを曲がるときに軋む音、ポイントを渡るときの音、ブレーキが非常から常用最大に緩んだときの音、鉄橋やトンネルの音などは特に大きく、そこで「音割れ」が発生することがあります。あとで音量を大きく編集するのは簡単ですが、音割れしてしまった音を綺麗な状態に戻すことはできません。録音レベルは小さくしましょう。
     また、録音レベルを自動調整してくれるレコーダーもありますが、瞬間的に大きな音が鳴っても自動調整が間に合わず音割れしてしまいますし、そもそも録音した音の音量が一定じゃなくなると、後々の編集が大変になります。自動調整機能はオフにしましょう。
  • ⑧録音中にメモを取る
     帰宅後、どれが何の音だったかわからなくならないように、時刻・録音区間・車両番号等をメモしておきます。
     また、「○○駅の手前で電笛3秒間」とか「○○駅通過後の右カーブの軋り音がいい」などのメモも有効です。
  • ⑨肩の力を抜く
     ここまでいろいろ書くと大変だなと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、録るだけ録っておけばなんとかなります。肩の力を抜いていただければと思います。
     あとは、「めったに遭遇しない車両に乗れた! レコーダー持ってるけど人たくさん乗ってる! この後予定があるから○○駅で降りなきゃいけない! でも次いつ乗れるかわからない!」みたいなこともあると思います。そこで「どうせ雑音入っちゃうし録音しなくていっか…」と諦めるのではなく、とりあえず録音しておくというのも手です。そんな音から生まれた車両データもありますし、何年か経った後に「○○○○年頃はこんな唸る音がしてたのかー」と資料として使えることもありますし、「この唸る音だけ切り取って使うか」という形で一部が生きることもあります。


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